高松高等裁判所 平成元年(行コ)8号 判決 1990年7月30日
徳島県三好郡三野町大字芝生一二四二番地一
控訴人
田中春夫
同県同郡池田町字シンマチ一三四〇番地の一
被控訴人
池田税務署長
穴吹晄宜
右指定代理人
田川直之
山本孝男
福岡知紀
香川竹二郎
宮武輝夫
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 控訴人は、
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が昭和五九年二月二一日付けでした控訴人の昭和五五年分所得税の更正(以下「本件更正1」という。)のうち総所得金額五五八一万一四四八円、税額九二二万七九〇〇円を超える部分、過少申告加算税賦課決定(以下「本件過少申告加算税賦課決定1」という。)のうち四六万一三〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定(以下「本件重加算税賦課決定1」という。)の全部(ただし、いずれも異議決定による一部取消し後のもの)をいずれも取り消す。
3 被控訴人が昭和五九年二月二一日付けでした控訴人の昭和五六年分所得税の更正(以下「本件更正2」という。)のうち総所得金額四二八七万四二二八円、税額一四九九万六一〇〇円を超える部分、過少申告加算税賦課決定(以下「本件過少申告加算税賦課決定2」という。)のうち七四万九八〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定(以下「本件重加算税賦課決定2」という。)の全部(ただし、いずれも異議決定及び審査裁決による一部取消し後のもの)をいずれも取り消す。
4 被控訴人が昭和五九年二月二一日付けでした控訴人の昭和五七年分所得税の更正(以下「本件更正3」という。)のうち総所得金額二七七六万六三一七円、税額五一六万二八〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(以下「本件過少申告加算税賦課決定3」という。)のうち二五万八一〇〇円を超える部分(ただし、いずれも異議決定及び審査裁決による一部取消し後のもの)をいずれも取り消す。
5 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
との判決を求め、
被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。
二 当事者双方の主張及び証拠の関係は、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。
理由
一 当裁判所も、被控訴人の控訴人に対する本件各課税処分は適法であり、それらの取消を求める控訴人の請求は失当として棄却されるべきものと判断する。その理由は原判決理由説示と同じであるからこれを引用する。
二 なお敷衍するに、控訴人は僻地民間中規模病院の医師確保の困難、財政面での窮状等を理由に、控訴人に対する所得税課税が重きに過ぎることを縷縷主張するが、控訴人経営の病院が僻地に存すること、医師確保の困難さ、都会地との立地条件の格差の存在等に十分配慮して被控訴人のした課税処分を検討しても、これを違法なものとして取り消すべき事由は見い出し得ない。控訴人の主張するように、控訴人の病院に勤務する医師たる二男夫婦や専従者たる妻の給与に対して高額な控除を認めることは、控訴人の主観的意図はともかく、結果として控訴人に対し他の納税者との比較において不当に利益を与え、ひいては控訴人の家庭に多くの非課税収入を残すことになり、税の公平な負担を目的とする税務行政上看過しえない問題を惹起するものと言わざるをえない。その他、控訴人がより高額の控除を主張する費目も、その主張する額が病院経営のために必要とする経費であつたとは認められず、適正な額をもつて更正されるべきであり、その額の認定につき被控訴人がした比準方式による査定は適法なものとして是認することができる。
三 よつて、控訴人の請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 安國種彦 裁判官 山口茂一 裁判官 井上郁夫)